0125 「物質を作り利用する」 小宮山宏 「物質を作り利用する」地球持続の物質(デバイスシステム) その1

燃料電池、マイクロ化学チップなどの具体例を解説しつつ、21世紀において科学技術が果たすべき役割について考えていく。まずは燃料電池について原理や効率を解説した後、現在の自動車のエネルギー効率を例に出しながら燃料電池が将来的に期待されていることを紹介する。次に、マイクロ化学チップの特徴を解説し、それが実際にどのように利用されているかや、今後の可能性を考えていく。最後に、21世紀に科学技術が目指すべき方向性を提言する。
0070 当事者性と専門性

上野千鶴子 その1 「わたし」のことを研究すると、学問ではないのか?自分で自分を研究対象とすれば「主観的」と呼ばれ、「科学的でない」と言われる。学問は、「中立・客観性」の神話によって厚く守られてきた。「客観」もまた「もうひとつの主観」ではないのか?だれをも「中立」の立場に置かない利害の異なる問題のなかでは、「第三者」とは多数派という名前の「もうひとりの当事者」ではないのか?「わたしのことはわたしがいちばんよく知っている」と、患者、障害者、不登校者、女性、高齢者などの社会的マイノリティが次々に声をあげ、当事者研究を始めた今、専門家とは何者で、何ができるのか?学問は誰のための、何のためのものか?を根源的に問う。
0124 「物質を作り利用する」 小宮山宏 「物質を作り利用する」ソフトマター その1

液晶ディスプレー、カラーフィルムなどに利用されている、ソフトマターについて解説する。まずは、構成単位が分子であることなどの基本的な特徴を踏まえた上で、ソフトマターの長所・短所などを解説する。その後、汎用プラスティック、高性能プラスティック・汎用フィルム・繊維などの構造材、液晶・半導体=導電性プラスティックなどの機能財に応用されている例を紹介する。
0069 学問とポジショナリティ:ポストコロトニアリズム

上野千鶴子 その1 「わたし」のことを研究すると、学問ではないのか?自分で自分を研究対象とすれば「主観的」と呼ばれ、「科学的でない」と言われる。学問は、「中立・客観性」の神話によって厚く守られてきた。「客観」もまた「もうひとつの主観」ではないのか?だれをも「中立」の立場に置かない利害の異なる問題のなかでは、「第三者」とは多数派という名前の「もうひとりの当事者」ではないのか?「わたしのことはわたしがいちばんよく知っている」と、患者、障害者、不登校者、女性、高齢者などの社会的マイノリティが次々に声をあげ、当事者研究を始めた今、専門家とは何者で、何ができるのか?学問は誰のための、何のためのものか?を根源的に問う。
0123 「物質を作り利用する」 小宮山宏 「物質を作り利用する」物質製造プロセス その1

物質の持つ性質は、それ自身簡単に使えるものではない。特に実際の用途に供するためには実験室内と異なる物質生成のプロセスが必要である。自己組織化などを用いるプロセスを紹介し、物性・プロセス・応用を考える。製造プロセスとは、無限の可能性のある現象の中から、一定範囲の現象を進行させることによって、無限の可能性のある構造の中から一定範囲の構造を実現することである。それは、物質・構造・速度・条件の四要素から成る。本講義では、特に鉄鋼を具体例として挙げて、製鉄のプロセスやその機能、応用例などを解説していく。
0068 学問とポジショナリティ:ジェンダースタディズ

上野千鶴子 その1 「わたし」のことを研究すると、学問ではないのか?自分で自分を研究対象とすれば「主観的」と呼ばれ、「科学的でない」と言われる。学問は、「中立・客観性」の神話によって厚く守られてきた。「客観」もまた「もうひとつの主観」ではないのか?だれをも「中立」の立場に置かない利害の異なる問題のなかでは、「第三者」とは多数派という名前の「もうひとりの当事者」ではないのか?「わたしのことはわたしがいちばんよく知っている」と、患者、障害者、不登校者、女性、高齢者などの社会的マイノリティが次々に声をあげ、当事者研究を始めた今、専門家とは何者で、何ができるのか?学問は誰のための、何のためのものか?を根源的に問う。
0122 「物質の性質」 家泰弘 「物質の性質」多様な物質,多様な物性 その1

今回の講義では様々な物質の持つ諸性質について解説する。まずは固体の中での電子の状態について、取り得るエネルギーと波数との関係を示したバンド構造を中心に解説する。次に、金属・絶縁体・半導体について、金属から絶縁体への転移が起こる過程を詳しく見ていく。その後、磁性に着目し、原子の磁気モーメントについて考え様々な磁性を紹介する。最後に、超伝導について、超伝導の基本的な性質や機構を解説する。
0067 それでも宗教?!

学問と社会ないし歴史といった大きな枠組みとの関係に対する問いを導入に、他者への無限の倫理が反転して無責任に至るような危険を含む清沢満之の精神主義=内面主義、これに対する井上哲次郎の議論が検討される。道徳を超出しつつも宗教の立場から俗世を肯定する可能性を清沢の議論は含んでいる。また近代哲学が締め出した
島薗進・末木文美士 その1 「死」の領域を田辺元の「死の哲学」によりつつ死者との共生として捉える試みもなされた。宗教というテーマの締めくくりとして島薗・末木両講師がそれぞれの宗教・文化観の差異などを取り上げ、若干ながら討議もなされた。
0058 「物質の生い立ち」 佐藤勝彦 「物質の生い立ち -素粒子、原子、宇宙-」物質世界はどのように運動するのか -物理法則- その1

物理法則とは、世界を動かす絶対的原理として存在するのか、それとも自然世界を記述するために人間が作る暫定的な仮説に過ぎないのか。経験的に纏め上げられてきた物理法則についてのこのような疑問から出発し、現代物理の二大柱の一つである量子論に触れながら、物理法則の統一理論について解説していく。森羅万象をいかに簡単な法則で説明するかは物理学の真髄であり、物理学の歴史は統一理論の歴史ともいえる。物理法則はなぜ美しいのかという疑問にも進化心理や人間原理の観点から触れている。
0121 「物質の性質」 家泰弘 「物質の性質」原子を操る,量子を操る?ナノサイエンスと量子情報 その1

量子現象の直接観測にスポットを当てて解説する。まずは、原子を見るための顕微鏡であるSTMとAFMを紹介する。次に、巨視的量子現象の中で最も注目されているボース・アインシュタイン凝縮について、液体ヘリウムの超流動現象とのつながりを踏まえて解説する。その後、量子力学における測定方法をいくつか解説する。また、通信における暗号化についても例を交えて紹介し、公開鍵暗号方式の仕組みを解説する。
0066 宗教はあぶない?!

島薗進・末木文美士 その1 「宗教」と聞いただけでひいてしまう人は多いだろう。そう、宗教はあぶない。でも、宗教だけがあぶないのだろうか。人は誰でもあぶないし、学問だってえらそうな顔をしているが、本当はあぶないのだ。それなら、勇を奮って、もう一度正面から宗教に真向かってみようではないか。学問と宗教は切っても切れない関係にあるのかもしれない。
0057 「物質の生い立ち」 佐藤勝彦 「物質の生い立ち -素粒子、原子、宇宙-」私たちは物質世界をどのように認識してきたか -物質の階層構造- その1

物質の生い立ちという観点から、素粒子から宇宙全体に至る物質の階層構造と運動法則、またその物質が運動する舞台としての時空、さらに物質と時空の起源、進化について解説する。物質世界を認識することで自らが何者であるかについてより深く知ることが出来ると考えられる。この講義では、原子核や素粒子についてその世界と生い立ちを解説し、正体不明の宇宙物質とされる暗黒物質・暗黒エネルギーについても触れる。
0120 「物質の性質」 家泰弘 「物質の性質」量子力学と人工構造物質?ハイテクと先端物理 その1

量子力学とそれにまつわる諸現象について解説する。量子力学とはミクロの世界のふるまいを記述する理論体系であり、それにはいくつかの特有の現象がある。ここでは、そのひとつである量子干渉について説明した後で、人工物質とメゾスコピック系、量子伝導現象などについても解説していく。
0071 人間学のまどろみ

坂部恵 その1 「歴史のなかのアートとサイエンス」。自然科学にしろ、人文科学にしろ、学問としてのそれらの研究・教育体制が今日見る形で整うのは一九世紀以後のことにすぎない。それに先立つ古代以来のリベラル・アーツの影響作用史のなかに、サイエンスを相対化し、ファイン・アーツと通底させる精神史の基層のあり方をさぐってみたい
(seed)
0065 「学問と宗教」 島薗進・末木文美士 切っても切れない関係

「宗教」と聞いただけでひいてしまう人は多いだろう。そう、宗教はあぶない。でも、宗教だけがあぶないのだろうか。人は誰でもあぶないし、学問だってえらそうな顔をしているが、本当はあぶないのだ。それなら、勇を奮って、もう一度正面から宗教に真向かってみようではないか。学問と宗教は切っても切れない関係にあるのかもしれない。
0127 「宇宙と素粒子」 小柴昌俊 宇宙と素粒子 -物質はどのように創られたのか- その1

大きなスケールを追い続ける宇宙物理学と、逆に小さなスケールを追い求める素粒子物理学は、結局、同じ目的である"万物の究極理論"に迫りつつある。すでに自然界のすべての元素が何処でどのように創られたかも解っている。第1回の講義では全般的なこと、特に「ニュートリノ」と呼ばれる素粒子がどんな役割をはたしているのかについて解説する。
0056 教員試験準備講義 何森 仁 教科書に言及しながらの「教員試験準備講義」
0064 「人間を科学する」 佐伯胖 モノを見ることと、ヒトを見ること

人間を科学的に探求するということについて、20世紀初めには物理学をモデルにして心理学が生まれたが、認知心理学、認知科学に発展する中で、コンピュータ科学や人類学、社会学などを取り込み、しだいに状況論的・関係論的視点を取り入れるにいたってきた経緯を解説する。最後に、ヒトを「ヒトとして見る」ことの意味を考える。
0055 数学教科書間の概念地図 何森 仁 三省堂の高等学校向け数学の教科書14冊の間の関係の、概念地図。
関数と三角比・三角関数について,同じような項目を別の教科書(2指導要領の改訂を挟んで書き換えられた3バージョン)でそれぞれどう説明しているかを、相互に比べながら読むことができます。
左下の四角に「三角関数」が三つありますが,それぞれクリックすると『高等学校の基礎解析』『高等学校の数学II』『明解数学II』という三つの別の教科書に出ている解説に飛べ,飛んだ先で質問やコメントを書き込める。
0063 「人間を科学する」 佐伯胖 人間を「関係」の中で見る

人間を科学的に探求するということについて、20世紀初めには物理学をモデルにして心理学が生まれたが、認知心理学、認知科学に発展する中で、コンピュータ科学や人類学、社会学などを取り込み、しだいに状況論的・関係論的視点を取り入れるにいたってきた経緯を解説する。最後に、ヒトを「ヒトとして見る」ことの意味を考える。
0062 「人間を科学する」 佐伯胖 「心」の科学は可能か

人間を科学的に探求するということについて、20世紀初めには物理学をモデルにして心理学が生まれたが、認知心理学、認知科学に発展する中で、コンピュータ科学や人類学、社会学などを取り込み、しだいに状況論的・関係論的視点を取り入れるにいたってきた経緯を解説する。最後に、ヒトを「ヒトとして見る」ことの意味を考える。
0061 「権力と自由の生態について」 佐々木毅 権力/自由の相互規定関係 その1

人間によって創造され、構想される社会は把握と理解の仕方によって、その実相が変化しうる。この講義では、自由VS権力という図式から、それらの互連関係、相互規定関係を解説し、自由の持つ側面を視野に入れた権力論の必要性を解説している。
0060 「物質の生い立ち」 佐藤勝彦 「物質の生い立ち -素粒子、原子、宇宙-」宇宙の創生、進化 -統一的自然観をめざして- その1

宇宙の構成や生い立ちについて、またそれらの概念がどのように作られてきたかについて解説する。現代常識となっている膨張宇宙の発見までの経過を示し、ビッグバン宇宙論からインフレーション理論といった宇宙創生の解明理論について触れていく。また、宇宙を構成する主要な物質である正体不明の暗黒物質・暗黒エネルギーについても解説する。
0059 「物質の生い立ち」 佐藤勝彦 「物質の生い立ち -素粒子、原子、宇宙-」時空 -物質の演舞の舞台- その1

この講義では主に特殊相対論および一般相対論を取り扱う。時間とは何か、空間とは何か。時空とは単に物質の演舞の舞台に過ぎないわけではなく、物質の演舞のパートナーであり、伸び縮みやねじれもすれば破れもする性質をもつ存在だということを解説する。この世界を知り自らの位置を認識するためにも時空が何であるかを知ることが必要である。相対論は、現在量子論と比較すると実用面では寄与が少ないが、将来的には多くの技術に必要とされる分野である。
0090 「世界システムという社会?」 田中明彦 世界システムについてのさまざまな見方

先人の語り(テキスト)から共生のメカニズムを考察する。例えば、明治時代のも日本の見方として、徳富蘇峰、中江兆民らの著書から検討を行っている。様々な世界観について考察し、論じる。
0089 「経済を軸にみるアジア世界 歴史と現状」 原洋之介 21世紀における日本とアジア

19世紀後半から21世紀にかけての、アジアの経済発展の流れについて解説する。「脱亜論」と「アジア主義」との対抗、「東アジアの奇跡」、「東アジア共同体」構想、などの話題を取り上げていく。
0088 「経済を軸にみるアジア世界 歴史と現状」 原洋之介 周辺文明圏 東南アジア

東アジア諸国が、様々な周辺の文明に対してどのような対応を取ってきたかを解説する。東アジアには、インド化された文化、イスラーム文化、中華文明の進入、西欧近代の強制的な進入などの文化が時代ごとに押し寄せてきた背景もあり、その対応も国ごとに異なる。
0087 「経済を軸にみるアジア世界 歴史と現状」 原洋之介 大文明圏 中国とインド

アジアの中から、大文明圏にある中国とインドを取り上げる。両国の文明と生態区を説明し、それぞれの文明に埋め込まれた市場経済について解説する。
0086 「経済を軸にみるアジア世界 歴史と現状」 原洋之介 アジアの多様な生態と歴史の構造

アジア各国のGNPと寿命の比較、経済を動かす力と仕組みについて取り上げる。アジアに見られる多様な生態区を示し、近世から21世紀までに迎えるアジアの時代について解説する。
0104 「国際人権保障の課題」 岩沢 雄司 自由権規約委員会はどんな活動をしているのか?

平和を乱す国は人権を蹂躙していることが多い。人権を国際的に保障することは、世界の平和を持続するために重要である。本講義では、国際社会はどのように人権を保障しようとしているかを考える。講師自身が国連自由権規約委員を務めており、自由権規約委員会の役割に特に焦点を当てる。
0085 「権力と自由の生態について」 佐々木毅 政治権力と境界線〜主権国家をめぐって〜 その1

政治権力を境界線の関係をめぐり、主権国家の時代からポスト主権国家の時代へと移行に見られる問題を取り上げる。境界線の流動性とそれをめぐる争い、主権概念の変容、国際化による主権国家の限界について解説する。
0118 「幾何学の営み」 古田幹雄 幾何学的精神とその変容 -トポロジーと多様体の概念を中心に-

人の営みとしての幾何学という観点から、他分野との交流とともに歴史的に成立し、なおも変容し発展しつつある幾何学なものの見方について解説する。
0103 「国際人権保障の課題」 岩沢 雄司 国際人権保障の展開

平和を乱す国は人権を蹂躙していることが多い。人権を国際的に保障することは、世界の平和を持続するために重要である。本講義では、国際社会はどのように人権を保障しようとしているかを考える。講師自身が国連自由権規約委員を務めており、自由権規約委員会の役割に特に焦点を当てる。
0084 「権力と自由の生態について」 佐々木毅 政治権力と参加〜民主主義をめぐって〜 その1

「なぜ、政治に参加するのか。」民主主義のもとでの制度化を取り上げる。直接民主制・間接民主制での問題を取り上げ、各々の制度化について、政党政治システムのタイポロジーについて解説する。
0117 「幾何学の営み」 古田幹雄 幾何学における分析と総合 -双対性あるいは鏡の中の自己-

人の営みとしての幾何学という観点から、他分野との交流とともに歴史的に成立し、なおも変容し発展しつつある幾何学なものの見方について解説する。
0102 「持続可能な開発の課題」 中兼 和津次 中国経済と環境・腐敗問題

いま注目を集める中国を素材に、経済発展とは何か、体制移行とはどういうことか、それをどう分析するのか、について、既存の理論の有効性と限界と合わせ論じ、また中国が抱える幾多の難問のうち、農民問題と環境問題に焦点を当てて現状と今後を考えてみる。
0083 「ウイルスからみた生命科学」 野本 明男 ウイルスと生命体

ウイルスは、ヒトなどの宿主に感染し、はじめて増殖が可能となる。このようなウイルスと宿主は必然的に自然生態系を形成し、共に進化してきた。両者の関係は調べれば調べる程絶妙であることが分かる。ウイルス感染現象の分子レベルの解析は、生命科学領域に新たな課題を提出し続けている。また、次々と登場する新たなウイルスに人類は対応していかねばならない。ひたすらウイルスを知り、ウイルスに学ぶ姿勢が大切である。
0116 「幾何学の営み」 古田幹雄 幾何学における認識と行為 -非ユークリッド幾何と時空-

人の営みとしての幾何学という観点から、他分野との交流とともに歴史的に成立し、なおも変容し発展しつつある幾何学なものの見方について解説する。
0101 「持続可能な開発の課題」 中兼 和津次 中国経済の高成長はこのまま続くのか?

いま注目を集める中国を素材に、経済発展とは何か、体制移行とはどういうことか、それをどう分析するのか、について、既存の理論の有効性と限界と合わせ論じ、また中国が抱える幾多の難問のうち、農民問題と環境問題に焦点を当てて現状と今後を考えてみる。
0082 「分子モーターから観た生命科学」 廣川 信隆 分子モーターはどのよに動くか

私たちの体を構成する神経細胞を始めとするすべての細胞は、合成した蛋白質を多くのモーター分子群により微小管のレールの上を巧妙に送り分けている。この細胞内物質輸送の分子機構は、脳の発生、神経回路網の形成、記憶、学習などの脳の高次機能など多彩かつ重要な生命現象を司っている。また、生物学の重要な課題である分子モーターの作動機構についても明らかになってきた。この講義では、分子モーターを視点として生命を俯瞰し、総合科学としての生命科学の最先端を分子の言葉で紹介する。
0115 「ファイナンスと数値計算」 楠岡成雄 伊藤解析とファイナンス

今日、金融の世界においては数学、特に確率論が盛んに用いられている。しかし、実務の世界では、すべての結果は数値として与えられなくてはならないため、数値計算を行うことが必須となる。ファイナンスから現れる数値計算の問題は、従来の工学で発生する問題とはかなり様相が異なり、代数的手法を含む、新たな方法が開発されつつある。これらの研究分野は近年、計算ファイナンスと呼ばれている。講義では、まずファイナンスにはどのような問題があるかを解説し、それを解決するために、どのような考え方がだされているか、さらに数値計算のためにどのような方法があるといったことについて述べる。
0100 「持続可能な開発の課題」 中兼 和津次 中国の経済発展とその特色

いま注目を集める中国を素材に、経済発展とは何か、体制移行とはどういうことか、それをどう分析するのか、について、既存の理論の有効性と限界と合わせ論じ、また中国が抱える幾多の難問のうち、農民問題と環境問題に焦点を当てて現状と今後を考えてみる。
0081 「分子モーターから観た生命科学」 廣川 信隆 体づくりと分子モーター

私たちの体を構成する神経細胞を始めとするすべての細胞は、合成した蛋白質を多くのモーター分子群により微小管のレールの上を巧妙に送り分けている。この細胞内物質輸送の分子機構は、脳の発生、神経回路網の形成、記憶、学習などの脳の高次機能など多彩かつ重要な生命現象を司っている。また、生物学の重要な課題である分子モーターの作動機構についても明らかになってきた。この講義では、分子モーターを視点として生命を俯瞰し、総合科学としての生命科学の最先端を分子の言葉で紹介する。

0114 「ファイナンスと数値計算」 楠岡成雄 ファイナンスの実務的な問題と高い次元の積分計算

今日、金融の世界においては数学、特に確率論が盛んに用いられている。しかし、実務の世界では、すべての結果は数値として与えられなくてはならないため、数値計算を行うことが必須となる。ファイナンスから現れる数値計算の問題は、従来の工学で発生する問題とはかなり様相が異なり、代数的手法を含む、新たな方法が開発されつつある。これらの研究分野は近年、計算ファイナンスと呼ばれている。講義では、まずファイナンスにはどのような問題があるかを解説し、それを解決するために、どのような考え方がだされているか、さらに数値計算のためにどのような方法があるといったことについて述べる。
0099 「持続可能な平和の課題」 佐藤 安信 平和構築の課題

国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)人権担当官としての体験を交えて、人間の安全保障と平和構築の学術上の位置づけを俯瞰し、その両概念の出自、発展、関係の理論的な背景を具体的な事例を示しながら議論する。また、人間の安全保障概念による平和と開発を、包括的統合的に研究する新たな平和構築研究のパラダイムを提案する。特に、その核としての人権・難民研究に光を当て、研究と実務の循環型の実践研究を提唱する。実務者などを招き、現在進行形の平和構築支援のあり方について、国際機関や政府、企業、大学のそれぞれのアプローチの可能性と課題を検討、討論する。
0080 「分子モーターから観た生命科学」 廣川 信隆 脳・神経の働きと分子モーター

私たちの体を構成する神経細胞を始めとするすべての細胞は、合成した蛋白質を多くのモーター分子群により微小管のレールの上を巧妙に送り分けている。この細胞内物質輸送の分子機構は、脳の発生、神経回路網の形成、記憶、学習などの脳の高次機能など多彩かつ重要な生命現象を司っている。また、生物学の重要な課題である分子モーターの作動機構についても明らかになってきた。この講義では、分子モーターを視点として生命を俯瞰し、総合科学としての生命科学の最先端を分子の言葉で紹介する。
(seed)
0113 「最適化の数理 -応用数理の視点」 室田一雄 アルゴリズム -計算する-

数学は自然科学において利用されるだけでなく、社会生活を支える重要な道具となっている。自動車や建築物のような有形物だけでなく、インターネット上の情報検索などのような仕組みを作る際にも数理的な考え方が役に立つ。社会における数学の役割と使い方を概説する。
0098 「持続可能な平和の課題」 佐藤 安信 紛争・平和と貧困・開発はどのように関連しているのか?

国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)人権担当官としての体験を交えて、人間の安全保障と平和構築の学術上の位置づけを俯瞰し、その両概念の出自、発展、関係の理論的な背景を具体的な事例を示しながら議論する。また、人間の安全保障概念による平和と開発を、包括的統合的に研究する新たな平和構築研究のパラダイムを提案する。特に、その核としての人権・難民研究に光を当て、研究と実務の循環型の実践研究を提唱する。実務者などを招き、現在進行形の平和構築支援のあり方について、国際機関や政府、企業、大学のそれぞれのアプローチの可能性と課題を検討、討論する。
0079 「発生生物学からみた生命科学」 浅島 誠 再生の科学

失われた細胞・組織・器官を再構成することを「再生」という。人工的な環境下で、未分化細胞から組織や器官をつくる再生科学は、再生医療へとつながり、そのツールとなるのが、未分化状態を保ちながら、様々な種類の細胞へと分化できる、幹細胞である。人間の眼や脳にも組織幹細胞はあるが、治癒として利用するには、人為的な器官形成の再現系を開発・解析して器官形成のメカニズムを理解し、人為的な器官形成の手法を開発する。倫理的問題をクリアしたうえで、三次元構造をもつ移植可能な臓器や組織を作る研究が求められている。
0112 「最適化の数理 -応用数理の視点」 室田一雄 最適化 -設計する-

数学は自然科学において利用されるだけでなく、社会生活を支える重要な道具となっている。自動車や建築物のような有形物だけでなく、インターネット上の情報検索などのような仕組みを作る際にも数理的な考え方が役に立つ。社会における数学の役割と使い方を概説する。
0097 「持続可能な平和の課題」 佐藤 安信 「人間の安全保障」と平和構築

国連カンボジア暫定統治機構(UNTAC)人権担当官としての体験を交えて、人間の安全保障と平和構築の学術上の位置づけを俯瞰し、その両概念の出自、発展、関係の理論的な背景を具体的な事例を示しながら議論する。また、人間の安全保障概念による平和と開発を、包括的統合的に研究する新たな平和構築研究のパラダイムを提案する。特に、その核としての人権・難民研究に光を当て、研究と実務の循環型の実践研究を提唱する。実務者などを招き、現在進行形の平和構築支援のあり方について、国際機関や政府、企業、大学のそれぞれのアプローチの可能性と課題を検討、討論する。
0078 「発生生物学からみた生命科学」 浅島 誠 器官形成のしくみ

器官形成メカニズムは、個体全体の構造と器官形成の相互作用、器官発生における組織間の相互作用、器官形成における様々な遺伝子の働き、の3つのスケールで捉え、各段階での構造と機能の相互関係を理解することで、明らかにできる。本講義では、位置情報の保持に関わる分節構造、上皮・間充織間での相互作用による誘導について紹介する。遺伝子による制御の例としては、体節形成、消化管形成、心臓形成などの分子メカニズムを取り上げる。これらの器官形成はみな、多段階の誘導の積み重ねによるものである。
0111 「最適化の数理 -応用数理の視点」 室田一雄 モデルとデータ -記述する-

数学は自然科学において利用されるだけでなく、社会生活を支える重要な道具となっている。自動車や建築物のような有形物だけでなく、インターネット上の情報検索などのような仕組みを作る際にも数理的な考え方が役に立つ。社会における数学の役割と使い方を概説する。
0096 「人類社会の将来」 緒方 貞子 人間の安全保障 −政策的展開
0077 「発生生物学からみた生命科学」 浅島 誠 生体情報システムとネットワークづくり

多細胞生物では、多くの細胞同士の応答や相互作用を適切に行うことでシステムを維持している。発生においては、生物の情報伝達ネットワークそのものが動的に変化し、各段階をシステムとして総合的に理解する必要がある。ポストゲノム時代の、極めて多数の因子の働きを同時に検出・解析できる今、生物の形作りはシステムとして見出すことができる。その例として、Notchシグナルによるアクチビンシグナルpathwayへの調節機構や、Wntシグナルの初期発生における役割、中胚葉および中胚葉組織を誘導するノーダルなどについて紹介する。
0110 「代数学の世界 -整数論とその応用-」 桂利行 デジタルの数学、セキュリティーの数学 -符号・暗号理論-

整数を用いて有限の世界を構成し、その理論がデジタル機器で用いられる誤り訂正符号の理論や、インターネット通信の安全性を保証する公開鍵暗号の理論に、どのように応用されるかを解説する。
0095 「物質の性質」 家泰弘 「物質の性質」物性物理学とは何をする学問か その1

物質の性質という観点から、さまざまな物質がさまざまな物理状態のもとで示す諸性質と、その基礎にある物理メカニズムとの関連を解説する。はじめに、物性物理学とはどのような学問か、事例を挙げながら解説する。まずは、携帯電話や先端医療、宇宙研究など、現代文明においてどのように物理学が応用されているかを確認する。そののちに、物性物理学の正確な定義を確認し、量子力学と原子構造、物質の存在形態、原子の凝集機構と結晶構造などに話を広げていく。
0076 「発生生物学からみた生命科学」 浅島 誠 卵から親への形作りのメカニズム

多種多様な生物種の数だけ、発生があり、ひとつの細胞から多細胞生物として安定な細胞集団が作られる。卵形成の間に物質を取り込んだり合成したりすることで、極性や勾配ができ、これらが遺伝子発現や細胞分化につながる。接している細胞をある組織に分化させる働きを誘導というが、そのうち中胚葉誘導は発生過程での細胞分化と形態形成の最初のシグナルといえる。中胚葉誘導因子アクチビンは、濃度依存的な細胞分化を誘導し、多くの臓器を作り出す事ができる。腔形成もまた、生物の形づくりに寄与している。
0109 「代数学の世界 -整数論とその応用-」 桂利行 初等整数論と有限の数学

整数を用いて有限の世界を構成し、その理論がデジタル機器で用いられる誤り訂正符号の理論や、インターネット通信の安全性を保証する公開鍵暗号の理論に、どのように応用されるかを解説する。
0094 「社会の形成と社会科学」 森田朗 共生のメカニズム──俯瞰講義を俯瞰する──

俯瞰講義で論じられた「共生」「共存」「権力」「秩序」の問題を展望し、共同体の発展について論じる。社会科学を学ぶことを「社会での出来事を理解し、分析、課題を解決するための道具と手法の習得」とし、社会の形成の目的としての理念、人類の歴史的経験の概念化を概説する。
0075 「権力と自由の生態について」 佐々木毅 政治権力の制度化〜立憲主義をめぐって〜 その1

人間の社会・共存関係のあるところに常に存在する権力現象の中で、制度化を前提とする政治権力について取り上げ、解説する。政治権力の発見により、政治学が誕生し、権力と限界の問題が見えてくる。政治権力にみる制度化の可能性について論じている。
0108 「現象を解析する」 薩摩 順吉 非線形の世界

数学の一分野に解析がある。ニュートン・ライプニッツ以来、主に微積分を用いて様々な現象が解き明かされて来た。しかし前世紀に始まるコンピュータの実用化以降、現象解析の手段は拡がって来ている。 ここでは、前半で微積分を用いた解析がどう進んでいったかを概観し、後半でコンピュータ登場以降の流れ、とくに非線形問題の取り扱いについて解説する。
0074 学問・モラルと希望 小林康夫 その1 これまでの講義を総括しながら、学問が人間の未来に対して負う責任を考える。現在の飛躍的に進行しつつある多層的な世界観においてどのように人間の希望を見いだすべきなのか。この根本的な問いに答えるための手がかりは何かを学生の皆さんと一緒に考えることにしたい。

0093 「世界システムという社会?」 田中明彦 世界システムの中の地域化 東アジアという事例

東アジアを事例に、実際にデータを入れながら現状分析を試みる。東アジアが、協力・共同体として形成され得るかどうか、それぞれの国の事情を考慮しつつ可能性と限界を考察している。
0107 「現象を解析する」 薩摩 順吉 現象の数理

数学の一分野に解析がある。ニュートン・ライプニッツ以来、主に微積分を用いて様々な現象が解き明かされて来た。しかし前世紀に始まるコンピュータの実用化以降、現象解析の手段は拡がって来ている。 ここでは、前半で微積分を用いた解析がどう進んでいったかを概観し、後半でコンピュータ登場以降の流れ、とくに非線形問題の取り扱いについて解説する。
0073 科学・哲学・文学

坂部恵 その1 「歴史のなかのアートとサイエンス」。自然科学にしろ、人文科学にしろ、学問としてのそれらの研究・教育体制が今日見る形で整うのは一九世紀以後のことにすぎない。それに先立つ古代以来のリベラル・アーツの影響作用史のなかに、サイエンスを相対化し、ファイン・アーツと通底させる精神史の基層のあり方をさぐってみたい
0092 「世界システムという社会?」 田中明彦 近代世界システムと21世紀の世界システム

現実に当てはまる概念の形成にむけ、概念と現実の相互連関から、現在の世界システムにみられる形成・展開の過程について解説している。また、21世紀の世界システムについて考察し、3つの圏域について論じる。
0106 「数学の魅力」 加藤 和也 素数の不思議

大自然が持つ神秘は、数の世界に凝縮して現れ、数の世界の神秘は、素数の世界に凝縮して現れるように思われる。素数のふしぎさをめぐって、類体論を始めとして深い研究がなされてきたことを紹介する。1994年のフェルマーの最終定理の証明や2006年の佐藤テイト予想の証明が、類体論のさらなる進展によってなされたことも説明する。
0072 坂部恵 その1 「クリティカ」の伝統

「歴史のなかのアートとサイエンス」。自然科学にしろ、人文科学にしろ、学問としてのそれらの研究・教育体制が今日見る形で整うのは一九世紀以後のことにすぎない。それに先立つ古代以来のリベラル・アーツの影響作用史のなかに、サイエンスを相対化し、ファイン・アーツと通底させる精神史の基層のあり方をさぐってみたい
0091 「世界システムという社会?」 田中明彦 政府のない社会における共生

単純化・理論化という観点から、共生のメカニズムについて考察する。「シェリングの分居モデル」を発端に、個人の意思決定、ゲーム理論、社会をモデルとしてみる数理社会学の視点について解説する。ゲーム理論と関連する理論から実際の生活場面、ルソーの鷹狩り、チッキンゲーム、囚人のジレンマなどを検討している。このような検討が制度・秩序形成へ有効性について論じる。
0126 平成18年2月21日、山上会館において岡部洋一名誉教授の最終講義が行われました。講義は「好奇心の趣くまま」と題され、趣味の登山に関する話題から始まり、研究生活を振り返りつつ、専門分野である超伝導エレクトロニクスや生体磁気、ニューラルネットワークスの研究とその発展について話されております。
講義は、おおよそ前半、中盤、後半の3つに分かれます。
講義前半はまず、様々な領域に関心を持った学生時代から、人間の脳への関心を背景にしつつ、超伝導の研究や生体磁場に関する研究がなされた経緯が話されます。
講義の中盤は、岡部教授ご自身が「ライフワーク」と述べる人間の脳の研究についてです。その成果として、入出力系や振動系、脳磁波などの研究について話されます。
「好奇心の趣くまま」 その1 mp4_1 (seed)
0119 「音楽はどこにある?」 坂本龍一 × 小林康夫 音楽はどこにある?

音楽家の坂本龍一氏と小林康夫教授が、音とは何か、音楽とは何か、対話型の特別講義を行う。

0105 「国際人権保障の課題」 岩沢 雄司 国際人権保障の諸相

平和を乱す国は人権を蹂躙していることが多い。人権を国際的に保障することは、世界の平和を持続するために重要である。本講義では、国際社会はどのように人権を保障しようとしているかを考える。講師自身が国連自由権規約委員を務めており、自由権規約委員会の役割に特に焦点を当てる。
0054 物質の科学 現代の科学・技術は、素粒子から生命体に至るまで、あるいは個人から社会全体に至るまで、さまざまな階層における基礎的な現象、応用に関わる事柄を対象にしている。そして、対象とすべき現象・事柄は、科学・技術の発展にともなって増加の一途をたどっている。
この講義では、われわれの身の回りの全ての現象・事柄の根源にある「物質」をキーワードとして、物質の起源を探る学問分野、物質の性質を明らかにする学問分野、物質を工学的に利用する学問分野を繋いで、「物質の科学」を貫く学術の流れを解説する。この講義によって、学生が現代の「物質の科学」の全体像を掴み、さらには、前期課程で学んでいる授業科目の重要性や位置付けを再考し、将来の勉学に向けて展望を得ることができればよいと考えている。
0053 生命の科学 21世紀は「生命科学」の時代とも言われている。それほど生命科学は20世紀から21世紀にかけて急速な発展と変化がみられてきた。その一つはヒトを含めて生命を“分子の言葉”で理解することが急速に進んできて可能になっていることによる。ヒトを含めたモデル生物のゲノム解読、細胞内情報伝達のしくみ、形づくりに関する遺伝子の解明、プロテオミクス、脳科学の解明などである。もう一つは、生命科学が今までの医学、農学、薬学、理学(生物科学)など、いわゆる生物科学という枠を超えて工学、教育学、経済学、情報学、環境学、認知学など、学際的かつ総合科学として大きく発展している。そのような生命科学が大きな拡がりをもち、発展と変化の中で生命科学をどのように俯瞰的にみていくのかは正直、非常に大きな課題である。この学術俯瞰講義では、個体の発生を通しての形づくりと器官形成、分子モーターからみた生命、ウイルス学、ゲノム科学と進化などに焦点をあてて、「生命」について俯瞰してみたい。各生物がもつ生命の歴史とそこに秘められた奥深さと美しさ、構造と機能の調和、ウイルスと人類の戦いのドラマなどを通して生命のもつ多様性と一様性など、「生命知」について語ってもらう。
0052 社会の形成 現代社会は、国際化、情報化、少子高齢化など複雑な課題に直面しています。今後平和で豊かな社会を形成していくためには、こうした課題に取り組み解決していかなくてはなりません。
政治、経済、社会、歴史などを対象とする社会科学は、複雑な社会現象を解明し、課題を解決するための知識を蓄積してきました。そして、今日の先端的研究は、社会における人間の行動や心理のメカニズムに関する多くの理論を生み出してきました。しかし、他方で、学問領域が細分化し、私たちが直面している現象をトータルに理解することが難しくなっていることは否めません。
各学問領域の研究が、現実の社会現象を理解し、課題を解決する上でどのように役立つのか。そもそもそれぞれの学問が社会現象をどのように捉え、解明しよう としているのか。またこれまで社会における人間がどのように捉えられ、どのような理念に基づいて社会が形成されてきたのか。
こうした各学問領域の最先端の知識と現実の社会との結びつきを、これから多様な学問領域においてより高度な知識を学ぼうとしている学生諸君に対し、人類がいかに社会を形成し共生してきたかに焦点を当てて、わかりやすく解説するのがこの講義の目的です。
0051 学問と人間 現在、大学は、第二次大戦後3度目といわれる、大きな変革期に直面しています。第1の変革期は、戦後まもなく、旧制大学から新制大学への移行期であり、第 2のそれは、1968/69年、全世界的なスチューデント・パワーが大学を席巻した時代です。それぞれの変革期には、大学のありかたが問われるとともに、学問それ自体が鋭く問われてきました。この、第3の変革期も例外ではありません。学問を問うことは、学問を担う人間を問うことであり、そもそも学問と人間との関係それ自身を問いかえすことです。学問とは、すぐれて人間による営みであるからです。人間、文化、社会、歴史を問題とする学問領域は、同時に、みずからの営みそれ自体を問いかえす宿命を帯びています。それは、人間を対象とする学問(科学)は、そもそもいかにして可能なのかを問い、理性とは背反するとされる対象を学問的に考察する意味を問い、真理それ自体の、いわゆる「客観性」と「歴史性」に対して、あらためて問いかけます。この講義は、「学術俯瞰講義」シリーズのひとつとして、人文・社会・心理の分野、とりわけ思想・宗教や学問論の分野において広い視野をもった本学関係者が講師を担当します。この講義によって学生諸君が学問自体の意味を問う営みに触れ、また人文・社会系統の学のありかたに触れられることを望んでいます。
0050 社会から見たサステナビリティ 人類社会・人類文明のサステナビリティ(持続可能性)について私たちが真剣に考えるようになってから、まだ1世代ほどしか経っていない。1972年、国連人間環境会議が開かれ、環境汚染の問題を中心に議論がなされ、「かけがえのない地球」が人類共有財産であることが謳われた。同じ年には『成長の限界』が刊行されている。こうして、無限の発展の可能性は否定され、「持続可能な開発」が大きな課題として浮かび上がり、92年には国連環境開発会議(地球環境サミット)が開かれた。
目をマクロな地球からミクロな人間に転じると、開発から取り残された人々は貧困に苦しんでいるだけでなく、生命や尊厳が脅かされる極限的状況に置かれている。個々人の開発(発展)を実現する方策として、1994年「人間の安全保障」が提唱された。そして、開発(貧困からの脱却)と平和(紛争や抑圧からの自由)とが結びつけられ、「持続可能な平和」も大きな課題として認識されるようになった。さらには、重大な人権侵害に対しては「保護する責任」も謳われるようになった。今や、サステナビリティの問題は一人ひとりの人間にとっての平和・開発・人権の問題として私たちの前に横たわっているのである。
本講義では、従来は地球環境問題として捉えられてきた「サステナビリティ」を、人類社会にとっての基本的・本質的な将来テーマとして捉え直し、「持続可能な開発」、「持続可能な平和」そして国際人権保障の観点から、「新しい社会と学問との関わり方」について俯瞰する。
0049 数理の世界 数学は、二千年以上の長い歴史を有し、現在もなお活発な研究がなされ、急速な発展を続けている分野である。数や図形の深い性質、関数や空間の構造が次々に明らかにされており、約350年間懸案だったフェルマー予想の解決や、約100年間未解決だったポアンカレ予想が解かれる等、最近の数学の進展には目を見張るものがある。また、数学は思考の自由さと汎用性の広さが特徴の分野で、諸科学の共通言語として、理学、工学、経済学、社会学など様々な分野に応用されている。たとえば、コンピュータの原理の発見のように、数学は時として社会を根底から変えてしまうような力も秘めている。数学は、人工的に分割できるものではないが、便宜上、代数、幾何、解析、応用数理の4つの領域にわけて考える習慣がある。そして自然や社会の現象を解析する応用面からみた数学をふくめて数理科学と呼んでいる。今回の俯瞰講義では、それぞれの領域において、特徴的なテーマを取り上げ、国際的に活躍する専門家によって広い視野から数学を俯瞰し、皆さんがこれから勉学して行く上での水先案内をしたいと考えている。前期課程で学んでいる数学が、今後学ぶであろう様々な分野の基礎であることを再認識し、皆さんがこれから進むべき道への展望を得るきっかけとなることを期待する。
0048 情報が世界を変える
0047 エネルギーと地球環境 われわれは、太陽系第3惑星である地球に生きている。この地球は、水惑星として生命を育み、その生命が地球そのものをつくりかえ豊かな自然環境を生み出してきた。石炭、石油、天然ガスなど、現代の社会に不可欠であるが枯渇性のストック型資源の蓄積もまた、地球における生命の進化の過程で作られた限りあるものなのである。

一方、20世紀は、科学技術の発展によりさまざまな人工システムが急速に普及した時代であった。航空機や自動車あるいは鉄道に代表される移動システムは、人間の地球上での移動を高速化し、ロケットは人間を月まで運んだ。また人間は、生物による生産活動を必要としない原子力という新しい燃料を得て、未曾有のエネルギーを開放した。半導体デバイスは人間の記憶・演算能力をはるかに超えた道具を生み出し、情報システムはわれわれの視聴覚能力を時空間を越えて拡大させた。その結果これらの科学技術により、利便性に富む輸送網、エネルギー網、あるいは情報網など、今日の巨大な人工環境が築かれたのである。

しかしこの人工環境は、周知のようにストック型資源の枯渇、廃棄物の大量排出、地球規模の気候変動など予想しなかった自然環境への不可逆的影響を与え、それ自身の持続可能性に関する課題を投げかけることになった。今、われわれが遭遇しつつあるこうした課題は、単なる理工学的課題ではなく、「エネルギー安全保障」や「地球温暖化」という言葉が示すように一国や一地域の問題にとどまらない地球規模の政治経済論的あるいは文明論的ともいえる課題となっている。

本講義では、エネルギーと地球環境に関して人類が遭遇している課題について、学術がいかなる視点からいかなる方法により課題解決に取り組んでいるのかを、理学、工学、政治学、経済学の観点から俯瞰する。
0046 学術俯瞰講義 学術俯瞰(ふかん)講義ってなに?

「学術俯瞰(ふかん)講義」は、世界初の試みとして2005年度に小宮山総長の発案でスタートしました。

学問の入り口にいる大学1,2年生の皆さんが、「知」の大きな体系や構造をより広い視点から見ることにより、それぞれの学問領域の全体像はどうなっているのか、そして学問領域同士はどのように有機的につながっているのか、を実感できることを目指しています。

この講義を通じて、皆さんが現在学んでいる授業科目の意義や位置づけを認識し、更に将来の研究についての展望を見出すきっかけを提供したいと考えています
0045 有理数に近い無理数と有理数から遠い無理数
0044 有理数に近い無理数と有理数から遠い無理数 大島利雄(数学) 円周率πは、3.141592... という無理数ですが、3.14 という近似値のほか、22/7 や355/113 というよい近似分数が用いられます。一方、ルート2は「有理数から遠い」ため、これほどうまいといえる近似分数は見つかりません。
 無理数を近似する分数は、「連分数」を使って求めることができますが、その応用として、フェルマーがウォリスに出した問題、すなわち x^2 - 61y^2 = 1 を満たす整数 x と y を求めよ、というような問題を解く一般的な方法を解説します。
0043 モバイルライフ−携帯端末考
0042 モバイルライフ−携帯端末考 川合 慧(情報) インターネット接続のできる携帯電話機によって、個々人がネットに誘われてゆき、常に変化し続けるネット社会の一員となります。これを実現するためには、単なる通信技術だけではなく、機械と人間を知り、その絶妙な組合せをかもしだしてゆくための英知が必要です。そのための基本的な原理と仕組みとを、平易な例などを用いて紹介します。身近な携帯電話器を別の目で見ることができるようになるはずです。
0041 あみだくじの数理
0040 あみだくじの数理 桂 利行(数学) 大学での数学「数理科学」は、代数・幾何・解析・応用数学の4分野に分けられているが、習ったことだけを使って解答していく高校数学とは違い、論理的に一貫していればどの分野の方法を使って解いても構わない。つまり、大学の数学は自由であり、無限の可能性を秘めている。この講義では代数学の一分野である群論について「あみだくじ」を使って考えようと思う。あみだくじという身近なもののなかにも数学の原理が隠されていることを感じてほしい。
0039 クラスターの科学
0038 クラスターの科学 真船文隆(化学) 昔の高校の化学の教科書には次のように説明されていた。「金属の単体をその性質を保ったまま小さくしていくと、原子になる」。しかし、ここ数十年の研究の成果を考えると、「金属の単体を、その性質を保ったまま小さくしようとしても、原子まではたどり着かない」と言ったほうが正しいようである。金属の単体を小さくしていき、その大きさがナノメートル程度になると、その性質が次第に変わってくるためである。原子や分子からなる塊を切り刻んでゆく、あるいは原子や分子を集めて凝集させることによって、原子や分子が数個〜数千個程度集まった微粒子を作ることができる。これらをクラスターという。これらクラスターは、1個の粒子からなる原子・分子、あるいは相当数集合したバルク(塊)とは全く異なる特異な性質を持つ。さらに、そのサイズ(構成粒子の数)によって反応性、物性、構造が顕著に変化する。バルクでは持たない性質が小さくするだけで発現するようになり、さらにそのサイズを変えることによって、これらの性質がまた変化する。このようなクラスターの「サイズ効果」について説明したい。
0037 第一高等学校校長森巻吉の生涯
0036 第一高等学校校長森巻吉の生涯 岡本拓司(科学史) 森巻吉(1877-1939)の名を知る人は現在では多くはいない。しかし、少なくとも、東京大学のうち教養学部だけが本郷ではなく駒場にある事情については、森の名前に言及しないで説明することはできない。また、二つの世界大戦に挟まれたまだまだ自由で平和であった時代に、第一高等学校で青春を謳歌した人々の多くは、高校生活を思い出す度に、「モリケン」という愛称で親しまれた英語教師・名物校長のことも懐かしく思い起こしたに違いない。 この講義では、決して有名ではないが、自分の人生についてまじめに考え、その考えを実行に移して身の丈にあった生涯を送った人物、つまり森巻吉と、その周辺の人々(父親の森巻耳、師の夏目漱石など)との交わりを紹介しながら、明治・大正・昭和前期という時代がどのような手触りをもっていたのかを想像してみることとしたい。駒場キャンパスと博物館の展示は、そのためのよい手がかりになるものと思われる。
0035 文化人類学とはどんな学問なのか?
0034 文化人類学とはどんな学問なのか? 伊藤亜人(文化人類学) なぜフィールドワークが必要なのか? フィールドワークとはどんなことをするのか? 私自身はどんなフィールドワークをしてきたのか? フィールドでは研究と生活はどのように両立するのか? フィールドワークは現地の人たちにとってどんな意味があるのだろうか? こうした内容を自分の経験をもとに話したい
0033 民主主義はいまも魅力があるのか?
0032 民主主義はいまも魅力があるのか? 森 政稔(社会・社会思想史)  民主主義は学校教育などではじめから正しいものとして教えられていることで、お題目になってしまい、その価値が何であるかがかえってわかりにくくなっている。また最近になって民主主義の価値の根本を考え直すべき事態も生じている。こうした点から、少数者の権利と差異の政治、ポピュリズム・ナショナリズムと民主主義の関係などの問題を取り上げ、民主主義を再考してみたい。
0031 国際法,そして国際社会とどう付き合うか?
0030 国際法,そして国際社会とどう付き合うか? 小寺 彰(法学)  国際社会の法である国際法は、現在では、環境や貿易、また人権などの身近な領域をカバーしている。国際協調主義を基本とする日本国憲法は、国際法に法律よりも高い地位を与えているばかりか、国際法を根拠に制定される法律も少なくない。しかし、欧米では経済分野を中心に国際法への懐疑が生まれている。また国際法ほど守られない法もないというのは前から言われてきたことである。なぜ国際法に懐疑の目が向けられるのか。そもそも国際法はどのように理解すればいいのか。国際法に関する最近の実例を用いて、この点を考えてみたい。
0029 小説読むべからず
0028 小説読むべからず 斎藤文子 いまどき小説大好きという高校生は珍しいでしょう。ただでさえ時間が足りない上に、マンガ、インターネット、テレビがありますから、小説を乱読する余裕などありません。それでも周りの大人は、古今東西の名作を読みなさい、と言いつづけているはずです。どうして小説を読まなければならないの? 国語力をつけるため、教養を身につけるため、より豊かな人生を送るため? でもこれらのどの目的も、小説を読まずに達成することができます。小説には歴史があります。ある時代に誕生し、発展し、今はすっかり力を失いました。その長い歴史の中で、若い人には小説を読ませるなという時代もありました。西洋近代小説の元祖とされている『ドン・キホーテ』(あの激安ディスカウントショップではありません)を取り上げながら、小説とは何かについて話します。
0027 21世紀の知への誘い
0026 21世紀の知への誘い 小林康夫 (表象文化論) この講義では、大学という場所から若い高校生諸君にメッセージを伝えたい。まず、「若い」ということは学問にとって決定的に重要であり、今なら君達はいろんなものを受け入れる柔軟性を持っている。今だから可能な世界との関わり方を大切にしてほしいということ。そしてもう一つは、高校生諸君には、知識を詰め込むことよりも「学ぶ力」を身につけてほしい、ということである。今この時期に、生涯にわたって「ものを考える能力」を身につけてほしいと願っている。今回は「若さ」の重要性について話してみたい。
0025 数理・情報
0024 物質・生命
0023 人間・環境
0022 社会・制度
0021 国際・地域
0020 思想・芸術
0019
0018
0017
0016
0015
0014
0013
0012
0011
0010
0009
0008
0007
0006 その他
0005 明解シリーズ
0004 高等学校シリーズ
0003 「数学」 三省堂・中京大学
0002 金曜講座 東京大学 大学院総合文化研究科・教養学部 東京大学教養学部では、高校生を対象とした公開講座を開講しています。
0001 CoREF (seed)